自分で紙に書き記す遺言のことです。紙とペン、そして印鑑さえあればどこでも誰でも作成できますから、 手間も費用もかかりませんし、手軽です。そのため多くの遺言はこの方式で書かれています。 ただし、法的に有効な書類にするためには、守らなければならない決まりごとがあります。
■全文を自分の手で書くこと
遺言に使うペンや紙には特に指定はありません。極端なことをいえば、メモ用紙に書き記した遺言も許されます。
ただし、全文をかならず自筆で書くこと。これだけははずすことができません。
誰かに代筆を頼んだり、ワープロやタイプライターで書き上げることは禁じられています。
たとえ一文字でも誰かの手にかかったことがわかれば、その遺言書は直ちに無効になってしまいます。
つまり法的な有効性を持つ遺言書は、誰かの指示を受けたり、誰かによって故意に書き換えられたりしてはいけない、ということです。
あくまでも遺言者の意思が自らの手によって表明されていることが重要なのです。
自筆証書遺言では字の上手い下手、文章が達者であるかどうかは関係ありません。
ただし、できるかぎりその内容は伝えやすくした方がいいでしょう。
誰が読んでもわかりやすい表現を心がけるべきです。民法で定められた相続方法や遺贈にまつわることを的確にまとめましょう。
■作成した日付をかならず記入すること
本文を書き終えたら、かならずその日付を記入してください。西暦でも元号でもかまいません。記入場所も特に規定はありません。
遺言書は何度でも書き直しを許されている書類です。早くから遺言書を用意していたけれど、
その後、持っていた財産を失ってしまったり、
長患いをしてすっかり家族の関係が変わってしまったりなどということも考えられるからです。
その場合、遺言者の死後、何通もの遺言書がみつかることもあります。
どの遺言書が一番新しく書かれたものかを確認するために、日付の記入は忘れないでください。
■氏名を自署し、押印を忘れないこと
氏名はかならず自署で明記します。本人であることが誰にでもわかるようならペンネームや芸名でもかまいませんが、
できるだけ戸籍上の氏名を記入してください。
署名は基本的に最後に記入するものですが、民法上では氏名の欄に関する規定はありません。
押印も忘れないことを確認してください。印鑑は実印でも認印でもかまいませんが、できれば実印を押しておいた方がいいでしょう。
押印の場所にも規定はありませんが、氏名の下に押しておきます。
遺言書が完成したら「遺言書」と書き記した封筒に入れ、遺言書で使った印鑑で封印しておくといいでしょう。
封筒に入れることは民法で定められていませんが、破損や汚れを防ぐことと、
なにより第三者の手によって勝手に書き換えられることを防ぐ目的があります。
自筆証書遺言は家庭裁判所で開封することになっています。それ以前に開封や書き換えの痕跡があれば、
その遺言は無効になってしまう可能性もあるのです。保管にはじゅうぶん気を遣って、紛失や破損されない場所を選びましょう。