遺言資格(遺言できる人、できない人)
遺言書は亡くなるときの最後の意思表示です。正常な意思を持って遺言する事柄を判断できる能力があれば誰でも遺言できます。 ただし、年齢的に満15歳に達しているというのが民法で定められています。 15歳以下の未成年や禁治産者や成年被後見人(心神を喪失している人)などは後見人をつけて遺言をすることが可能です。 この場合、後見人は親族でないことが望ましいです。遺言事項(遺言書でできること)
遺言書を残しておくことで本人の意思を伝えることができますが、法律上、すべてが有効に実行されるわけではありません。
遺言書を書く前に遺言書でできること、できないことを確認しておきましょう。
遺言書に書かれた項目で法的に拘束力を持つものを遺言事項といいます。
遺言事項には大きく分けて次の三つの事項があげられます。
(1)身分に関すること
■非嫡出子を認知できる
婚姻外で生れた子供、いわゆる隠し子を認知できます。これは胎児であっても当てはまります。
認知は生前でもできますが、どうしても本妻に言い出せない場合など、遺言書によって認められるのです。
認知された子供は相続人の一員として財産分与の権利が発生します。
■未成年者の後見人を指定できる
親権者が一人しかいない未成年者に対して、その子供の生活や教育、または財産の管理を委託する後見人を一人指定できます。
■後見監督人の指定ができる
指定された後見人が後見の責任をきちんと果たしているかを監督する後見監督人を指定することができます。
(2)財産分与に関すること
■遺贈することができる
遺言による財産の贈与を遺贈といいます。遺贈は相続人にはなりえないどんな人にでもすることができます。
家族以外の人に遺産を与えたいときはこれにあたります。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、遺産の分配比率を指定して贈る方法を「包括遺贈」といい、
遺産内容を指定して贈る場合は「特定遺贈」といいます。
■寄付行為ができる
社会事業などに財産の一部を寄付するなど、財団法人の設立を目的として財産を提供することができます。
■信託の指定ができます
一定目的のために、財産管理やその運用を指定した信託銀行に委託することができます。
(3)相続にかんすること
■相続分を指定できる
法定相続分と異なる遺産分割をしたいときは、その分割内容を具体的に指定でき、その指定を第三者に委託できます。
特定の子供に多くの財産を残したいときなどはこれにあたります。ただし、法定遺留分は確保されるので注意してください。
■相続人の廃除または廃除の取り消しができる
相続人の権利がある人が遺言者に生前虐待や侮辱をしたり、その人の素行が著しく悪いなどの理由で財産を相続させたくないとき、
その人を相続から廃除することができます。また逆に、一度相続人から廃除した事実を取り消すこともできます。
■遺産分割の方法を指定できる
遺産の分割相続にあたって、具体的な物件に遺産分割の方法を指定することができます。
不動産や株券、宝飾品など何を誰に相続させるかを指定することができます。またその指定を第三者に委託することができます。
■特別受益分の持ち出しの免除ができる
生前に贈与した財産を特別受益分といい、遺産分割の際、相続分に加算されることになっています。
しかし遺言によってその持ち出しを免除することができます。
■相続人相互の担保責任の指定ができる
遺産を分割した際、誰かの受け取った財産に過不足や瑕疵があった場合、
不公平を避けるためお互いの損害を担保しあわなければなりません。
遺言では民法に定められたものとは違った担保の方法を指定できます。
■遺留分の減殺方法の指定ができる
遺言によって侵害された遺留分を、法定相続人が減殺(戻してもらうこと)を求める際に、どの財産から減殺していくのか、
その順番と割合を指定することができます。
■祭祀承継者を指定できる
墓地や仏壇などの承継者を指定することができます。これは生前に指定しておくことも可能です。
また祭祀承継者に指定された人は葬儀の喪主となります。
■遺言執行者を指定できます。
遺言を執行させるため、弁護士などを遺言執行者に指定することができます。
またその執行者の指定を第三者に委託することができます。
非遺言事項(遺言書でできないこと)
遺言書には何を書いてもかまいません。生前の感謝の気持ちや死亡後の心配事、遺言者の心情を書き表すのは自由です。
しかし内容によっては法律的に効力を発しない事柄があります。
遺言書を残すということは、遺言者からの一方的な行為ですから、
こと相続人との関係に基づく内容は双方の合意を得られないため、法的な拘束力を持てないのです。
(1)結婚・離婚に関すること
結婚や離婚は当事者の合意に基づいて行うことですから、遺言によって書き換えられることはありません。
遺言書に「妻と離婚して相続権を与えたくない」と書き記してあっても、法的には無効です。
(2)養子縁組に関すること
養子縁組に関しても死亡後、遺言書によって書き換えられることは法的に無効となっています。
養子縁組をしていなかったために、わが子同様に育ててきた子供に相続権が与えられない例があります。
そうならないためにも生前に養子縁組を執り行っておくことをおすすめします。
養子縁組ができなかった場合、遺言書に遺贈のかたちで書き残しておくことができます。
また養子縁組の解消についても遺言書では効力を持ちません。
(3)遺体解剖や臓器移植に関すること
自らの遺体解剖や臓器移植を遺言書で望んでいても、家族の同意なくしては行うことはできません。
もしこれらのことを望むなら、生前から家族と話し合いをしておきましょう。
そのほか、借金債務の分割指示や葬儀・香典の指示も遺言書では法的に拘束力を持ちません。