遺言書のメリットやデメリット、自筆証書遺言・公正証書遺言、遺言の書き方の注意点、遺言書の執行方法を説明。

遺言の種類と書き方

遺言書を残すメリット

相続分指定(特定の子供に多く相続させる)

家族のあり方がさまざまになった今、家庭によっては財産の分与もいろいろな事情を含んできます。 遺言書がなければ財産は法律で決められた割合の配分に従います。これは「法定相続分」といって民法に定められていますが、 遺言を残しておけば相続は遺言書にしたがわなければなりません。特定の家族だけに多くの財産を残すことができるのです。
妻と子供二人を残して死んでいく場合、法定相続どおりでは財産の二分の一が妻へ、 残る二分の一を二人の子供で均等に分けることになります。 つまり、それぞれの子供は四分の一が取り分となります。遺言では、その分配比率を思いどおりに指定できるのです。
たとえば、「少ない年金では気の毒だから長年連れ添った妻には財産の大半を与えておきたい。」、 「現在農業を共同経営している長男に、農地を含めて財産の半分を引き継がせてやりたい。」、 「いまだに独身である娘の今後が心配なので、他の兄弟より多くのお金を渡せないものか。」、 あるいは「一向に家に立ち寄らない長男には、財産をあまり渡したくない。」などです。
こうした生前の主張を遺言書では反映させることができます。誰々に財産の何を相続させたい。 誰々には財産のうち四分の三を分け与えたいなど、具体的な内容を書き記すのです。 遺言書に書かれていれば財産の振り分けは法定相続分によらず、遺言者の意思が優先されます。
ただし、ここでは注意が必要です。遺言書の効力が絶対ならば、遺言書に指定して、 特別に思う人へ全財産を譲り渡すこともできそうです。 しかし、それでは財産を譲り受けられない他の家族は遺言者の一方的な思いに振り回される結果となります。 遺言者の意思はできるだけ実現させてあげたいが、残された家族それぞれにも財産を受け取る権利があるのです。 そんな不公平をできるだけなくすため、民法では遺留分といって、各相続人が得ることができる最低の相続分が確保されています。
遺留分を侵害すると、その分の相続指示は無効になりますから、遺言書で相続分の振り分けを指定するときは、 充分確認しておいてください。

相続人指定(相続権を持たない人に財産分与をする)

遺産相続では法律上、遺産の分配をしてもらえる相続人は残された家族の構成によって決められています。 遺言者が亡くなったとき、配偶者と子供たちが健在なら、遺言者の親や兄弟、孫たちには相続を受ける権利はありません。
しかし、長年同居している兄弟や、特にかわいがっていた孫など、相続権を持たない身内へ財産を与えたいという希望があれば、 遺言で指定しておくことができるのです。この場合、財産の何割を渡したいと相続配分を決めておくこともできますし、 誰に何の財産を与えるのか指定しておくこともできます。
相続人にはなりえない血縁ではない人へも、遺言書に書き記しておくことで財産を譲り渡すことが可能になります。 特別にお世話になった知人や長年よく働いてくれたお手伝いさん、何十年か連れ添ったが、戸籍上結婚をしていない内縁の妻など、 故人にとっては他人と考えられない人です。
ただし、こうした第三者への財産分与は、法律で決められた遺留分を侵害しない範囲であることを承知してください。 遺留分さえ守られていれば、遺言によっていくらでも財産を譲ることができます。
また、残された財産を地域や施設に寄付することも、遺言によって可能になります。 「今まで活躍してきた地元の地域振興に役立てたい。」、 「子供に恵まれなかったので、親のいない子供たちのために施設に寄付をしたい。」 残ったお金をあなたの希望することに役立てたいと考えているのなら、遺言書に残すことをお勧めします。
こういった寄付や寄与にあてる財産は相続税が免除されることもあるので、節税対策にも一役買います。

財産指定(さまざまな財産も遺言へ)

遺言では財産のひとつひとつについて誰に相続させるのか指定することができます。 金銭以外の財産は、分割が難しいものがほとんどです。法律で相続人を決めた場合、分割不可能な財産を受け取った人が、 他の相続人に超過分を支払うか、あるいは売却してみんなで分けあうことになります。 トラブルの原因にもなりますし、大切な財産が人手に渡ってしまうことにもなりかねません。
金額におきかえると不公平がでてくることもありますが、遺言者が家族の気持ちを思いはかって財産指定をしておけば、 納得できることも多いので、分割が難しい財産は遺言でその相続人を指定しておきましょう。
相続される財産には美術品や宝飾品、あるいは自動車やペットまでもが含まれます。 遺品となる遺言者の持ち物は、故人の意向がわかりづらいため、家族にとって取扱いが難しいものです。 誰に何を渡すなど、形見分けの指定をしておきましょう。
特に美術品や骨董品など財産価値が高いと思われるものは、取得日、購入価格など、細かな記述を残しておくといいでしょう。 相続財産として、相続税の対象になるかもしれないからです。その時は財産価値を知るために鑑定依頼をすることになります。 残された資料が何もないと、鑑定には時間と費用がかかります。そこであらかじめ目録などを用意しておいて、 相続人を決めておくことが、残された家族のためにも、よりよい遺言の仕方といえるでしょう。
かわいがっていたペットの行く末が心配だったら、その後の飼い主を遺言で指定することもできます。 ペットの価値は、たとえ血統書つきのゴールデンレトリバーであっても、ゼロに等しいものです。 しかし、遺言では財産価値にこだわることなく、伝えたい意思を残しておくことができるのです。 心残りに思うこと、生前には言えなかった家族への思いやりなども遺言書で表現しておきましょう。


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