ここでは選手を支えたコーチのコメントを紹介します。 当時、私は中学生であったということもあり、選手ほどコーチの名前や顔は浮かばなかったのですが、 私よりも上の世代にはたまらない名前がならんでいるのだと思います。
■土井ヘッドコーチ
ヘッドコーチの肩書きはつきながらも、最大のテーマは木戸を1人前のキャッチャーに仕上げることだった。
「土台作り−のテーマが僕には助かった。少々目をつむっても木戸を使っていくことができた」
結果はセ・リーグでも1・2を争う捕手に成長した。
「阪神のOBじゃなかったのもオレに幸いしたよ。雑音がまったく入らなかったからね」
ベンチでも常に吉田監督をサポートし、参謀役を立派に果たした。
■一枝内野守備・走塁コーチ
吉田内閣の知恵袋。「失敗を恐れていて、いい野球ができますか?」外見からは想像もできない熱血、情熱コーチ。
「何を悩むんや。悩むんやったら倍の練習せんかいっ」と選手を鼓舞する術は掛布や岡田ら主力にも容赦なく、
チームが一体感を持った推進者でもあった。弁舌もさわやか。疑問点には何時間もかけて話し合う。
「納得できるんですよ」粗い走塁で掛布がしかられ、その掛布に心底から納得させたのも一枝コーチならではであった。
■並木打撃コーチ
17年ぶりの現場復帰に「いまの野球が分かるかな」といぶかる声もあったが、選手の心の中に入った指導法が功を奏した。
「人それぞれ顔が違うように考え方も別々。長所を伸ばしてやりたい」押しつけ指導をやめ、個人の打法をまず尊重。
バース、掛布、真弓、岡田ら”大人の集団”を巧みに操縦した。”イッキ攻撃”の影の仕掛人といえよう。
■米田投手コーチ
「いま調子いいものがエースであり、好投手」が持論。現役350勝の実績にやはり無言の説得力がある。
ペナンとレースの真っただ中に主戦クラスの池田、中田に2軍行き指令。
「顔や名前だけでは使えん」と調整させ、胸突き八丁の夏場に再生させた長期計画が”弱投”のレッテルを覆させた。