日本法例26条では「相続は被相続人の本国法に依る」と規定されています。 以下、本国法につき、被相続人が朝鮮表示の場合は共和国法、韓国表示の場合は韓国法を前提とします。
被相続人が朝鮮表示の場合、共和国法を準拠法とし共和国対外民事関係法45条の反致規定により、 つまるところ日本民法の規定によって処理されます。 また被相続人が韓国表示の場合、韓国法を準拠法としますが、韓国国際私法27条3項の「行為地法によっても妨げない」の規定により、 日本民法の規定によっても処理できますが、 日本にある不動産に関する遺言だけは、不動産の所在地である日本方式によることになります(韓国国際私法50条3項4号)。
日本民法では同法に定める方式以外の遺言は無効とする非常に厳格な方式を定めています。
それは、遺言の内容が家族間に大きな利害の対立を生じる場合が少なくなく、
そのうえ遺言の偽造や変造が行われる恐れもあるからです。
したがって、遺言を行う場合には、民法が規定する方式によらなければ有効と認められないこととされています。
遺言の方式には、通常、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
「自筆証書遺言」は、文字通り遺言者自らが遺言の内容すべてと、遺言をした日付、氏名を自筆で明記し押印して作成します。 遺言の内容・日付・氏名・押印は、これらのうちどれを欠いても、遺言としては効力が無くなりますので注意が必要です。 また、自筆とは、筆記具を問いませんが、ワープロやタイプではなく、あくまで自分で書かなければなりません。 遺言は後に書き直すことが可能ですが、その場合、一番新しい遺言の内容が実行されることになります。 しかし、遺言の日付を「吉日」などとすると、有効な日付とは認められず遺言の内容すべてが無効とされてしまいます。 いつでもその気になれば人知れず作成できる簡便な遺言方式のようですが、遺言を作成しても後に発見してもらえなかったり、 変造や破棄の恐れもあります。
遺言があることを知ってもらいたいが、内容は知られたくないという場合には「秘密証書遺言」という方法があります。 秘密証書遺言は、遺言者が遺言の証書を作成(自筆でなくとも、ワープロやタイプ、または代筆も可)し、 署名、押印して封印した後、公証人と二人以上の証人の前に提出して、自分の遺言である旨、 そしてその筆者の氏名、住所を述べ、公証人が所定の手続きをし、封書に日付を書き、 証人及び公証人が署名、押印して作成することになります。 秘密証書遺言は遺言内容を秘密にしたいときは有効な方法ですが、紛失、隠匿、破棄などの恐れがあり、 また、内容を公証人がチェックしていないので要件の不備などで後日紛争になる恐れもあります。
秘密証書遺言も自筆証書遺言も相続人が勝手に開封せず家庭裁判所で検認してもらわなければなりません。
「公正証書遺言」は、二人以上の証人の立会いのもとに、遺言者自らが公証人役場に出向き、遺言の内容を公証人に述べ、
公証人がこれを筆記、日付を記して作成し、それに本人、証人および公証人がそれぞれ署名、押印します。
遺言者が病気などで公証人役場に行くことができないときには、公証人が自宅や病院まで出張してくれます。
作成された遺言書の原本は公証人役場で半永久的に保管(遺言の正本と副本は遺言者が保管)されるので、
紛失や改ざん等の心配がありません。
在日コリアンの相続人間の複雑な状況を考えるとき、書き落としがないか、きちんと内容を明記するためにも、 多少の費用はかかっても、後々の争いや面倒を避ける意味でも、公正証書遺言がよいと思われます。