婚姻届を出さないまま事実上の婚姻関係(内縁関係)が継続している場合、
法律上の婚姻関係がないため、財産を相続することができません。
しかし、相手方の財産に対する相続権自体は認められませんが、相手方に他の相続人がいなければ、
「特別縁故者」として財産を取得できる可能性があります。
そこで事実婚であった相手方に相続人がいないかを確認する必要があります。 (以下、本国法につき、被相続人が朝鮮表示の場合は共和国法、韓国表示の場合は韓国法を前提にします)
注意しなければならないのは、事実婚であった相手方が朝鮮表示あるいは韓国表示のいずれかであるかにより、 相続の準拠法の適用が異なってくるので、相続人の範囲及び順位に違いが出てくるという事です。
事実婚であった相手方が朝鮮表示であった場合、日本の法例26条により共和国家族法が適用されますが、 共和国対外民事関係法45条1項により相続の準拠法は日本法への反致が成立するため、 相続人の範囲及び順位は日本民法で判断されることになります。
しかし、事実婚であった夫が韓国表示であった場合、日本の法例26条により韓国法が準拠法となるため、
日本法と相続人の範囲及び順位も相違することになります。
韓国法では、被相続人に直系卑属・直系尊属・配偶者・兄弟姉妹のすべてがいない場合、
第4順位として被相続人の4親等内の傍系血族が相続人となるので日本法によるよりは、相続人の範囲が広くなります。
事実婚であった相手方に直系卑属・直系尊属・配偶者・兄弟姉妹のすべてがいない場合には、
第4順位として被相続人の4親等内の傍系血族が存在する可能性がありますので、韓国の戸籍等を取得し、
相続人の存否を明確にするべきです。
相続人の存否が明確でない場合、その相続財産の管理や相続人の捜索等を行う相続財産管理人が必要となります。
この相続財産管理人の選任の裁判管轄がどこに認められるかに諸説ありますが、
被相続人の最後の住所地国又は相続財産の所在地国に管轄権があるという説が有力です。
したがって、被相続人の最後の住所地が日本にあり、相続財産が日本にある場合には日本に管轄権がありますので、
利害関係人が被相続人の住所地又は相続開始地の家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てます。
次に、相続財産管理人の権限である管理清算の準拠法については、相続準拠法とする説と財産所在地法とする説がありますが、
相続準拠法を敵要すべきとする説が多数です。
相続財産管理人が債権者へ公告、相続人捜索の公告等一定の手続きを行った後、
債権者への支払いや相続権を主張する者がいない場合、事実婚であった者は特別縁故者として財産分与の請求ができます。
この特別縁故者への財産分与については、相続財産の所在地法が適用されるというのが多数説ですので、
日本の家庭裁判所へ財産分与の請求をします。
この特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、 その他被相続人と特別に縁故があった者を指します。 具体的な特別縁故者の範囲としては、内縁の妻、事実上の養子のように、 密接な関係にありながらも相続権が認められない者や知人等で、特に被相続人の療養看護に努めた者等が含まれます。
在日コリアンの中では、長年生活を共にしてきたにもかかわらず、婚姻届の提出がないため、相続人と認められず、 このような問題がよく起こりますので、相続による財産の移転を容易にするためには、 生前に婚姻届等の提出により相続関係を法的に確定させておくべきでしょう。