身寄りのない一人暮らしの老人が亡くなったときや、天涯孤独と称してはばからなかった人が亡くなったとき、 残された財産はどうなるのでしょうか? 核家族化がすすんだ現在では、このように配偶者や子供もなく、相続人がいるのかわからないまま亡くなる人も多くいます。 本人の意思により遺言が残されていれば、それに従った相続人、遺贈先が決定されますが、たとえ遺言による受遺者がいても、 その被相続人にほかの相続人がいないかどうか調べる必要があります。遺言書もなければ相続人不明という状態になります。
このようなときは「相続人の不存在」といい、民法によって次のような手続きが定められています。
■財産を法人化する
相続人が見つからない財産は、清算するする人がいないのですから、便宜上一旦法人化されることになります。
■相続財産の管理人を選任する
遺言にかかれていた財産を受けとる人や債権者など、被相続人に対して利害関係を持つ人、 または検察官などの申請によって家庭裁判所で財産の管理人を選任します。 管理人は財産目録を作成し、遺言による受遺者や債権者に対して現状を報告しなければなりません。
■第1回目相続人捜索の公告を出す
管理人は被相続人、あるいはその関係者の戸籍を調べるとともに、公告を出して相続人を捜索します。 公告期間は2ヶ月以内です。このあいだに相続人がみつかれば財産は相続人に引き渡され、管理人の役目は終わります。
■相続財産清算の公告を出す
管理人が選任されて2ヶ月を過ぎても相続人が見つからないとき、 管理人は財産の債権者や遺言による受遺者に対して請求を出すように公告します。 遺産の清算がようやく始まるわけです。この公告期間は2ヶ月以上と決まっています。
■最後の相続人捜索の公告を出す
相続財産清算の公告の期間が過ぎても相続人が現れなかった場合、最後の相続人捜索の公告を出します。 それと同時に管理人は申請のあった債権者を優先させて、債権者や受遺者に相続財産のなかから債務の弁済をします。 最後の公告期間は6ヶ月以上とされ、管理人や検察官の請求によって家庭裁判所が行ないます。