相続の開始時期、法定相続人と財産範囲、遺言と遺留分、遺産分割協議や相続放棄の遺産相続の法律を説明。

遺産相続の法律知識

欠陥協議書の防止策

書類作成時にはいろいろな注意が必要ですが、遺産分割協議の内容に関しては、 相続人の同意がある限りどんなものでもかまいません。 同様に、「遺産分割協議書」に書かれる記載事項もどのような内容でもいいことになります。 例えば「○○の相続分をゼロとする」などと書かれていても問題はないのです。
ところが、「遺産分割協議書」の作成に欠陥がある場合には、協議書を再度作成することになります。 欠陥とは次のようなことです。

■分割する遺産の範囲が不明確な場合

遺産分割協議書を書く際に最も注意しなければならないのは、分割対象財産の明確化です。 このケースで一番多いのは、預貯金が特定できない場合、不動産の表記が不明確で特定できない場合、 遺産分割協議書を作成した後に財産が見つかったり、誰かが財産を隠していた場合などが考えられます。

預貯金が特定できない場合
通常、預貯金口座は複数あることが多いでしょう。異なる銀行に種類の異なる口座を持っていたり、 郵便局に普通口座や定期口座があったりします。 このような場合でも、協議書には次の五点がきちんと記載されていなければなりません。

(1)金融機関名
(2)その支店名
(3)口座の種類
(4)口座番号あるいは証券番号
(5)最終残高(相続発生時の残高)

ひとつの金融機関にひとつの口座しかない場合以外は、必ずこの五点を明確に記載することです。 「銀行預金を○○の所有とする」「郵便局の貯金を△△の所有とする」などと協議書に書いても、 明確に特定できませんから、協議書自体が無効で、作り直すことになります。

不動産の表記が不明確な場合
遺産分割では、不動産の占める割合は金額的にも大きいですが、それだけに分割では厳密さが要求されます。 社会的にも「登記」ということで法的な厳密さが保たれています。 このため、不動産の分割では「登記簿謄本の記載と一致させる」必要があります。

建物の場合に必要なもの(所在、家屋番号、種類、構造、床面積)
土地の場合に必要なもの(所在、地番、地目、地積)

協議書への記載では、以上の点を「登記簿謄本と一字も間違うことなく」記載されている必要があります。

協議書作成後に財産が出てきた場合
遺産分割協儀では、その前提は「すべての相続財産が明確に提示されている」ことであり、 本来的には相続人全員でそれについて協議するわけです。
協議成立後に財産が出てきた場合は、その財産について改めて協議すればいいわけですが、 現実として相続人の一人が財産を隠していたり、気付かなかった財産が後から出てくることも皆無ではありません。 このような場合、法律の建前では「協議のやり直し」が必要となります。
しかし、相続人全員が最初の協議を「有効として納得している」場合や、仮に協議後に財産が出てきた場合でも、 それを「特定の相続人に相続させる」合意が得られるなら、分割協議書作成後に出てきた財産についてのみ改めて相続人全員で協議し、 分割協議書を作成します。

相続人を除外すると無効

遺産分割協議は、相続人全員の参加が原則です。 うっかり相続人を除外してしまうのは「相続をしたくない」という人や、行方不明者を外すケースです。 相続人全員による協議でなければ、その協議自体が無効なのです。もちろん、協議書も意味を持ちません。
相続を拒否するなら、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行わなければなりませんし、 行方不明者については家庭裁判所に「財産管理者」の選任を申立て、代理人を立てる必要があります。
不当に除外された相続人は、他の相続人に対して分割協議のやり直しを請求することになります。 これが拒否されたり、協議がうまく成立しない場合には、救済手段として家庭裁判所に調停や判の申立てを行います。 いずれにしても、遺産分割のやり直しをしなければなりません。


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