デジタル万引きについて官公庁が公表している統計データはないため、ここでは書店などにおいて、 いかに万引というものが深刻なものであるかを紹介します。
まず、万引をしている人、もしくは万引きをする可能性のある人の多さにあります。
ニュースで報道される犯罪といえば、銀行強盗や殺人事件が中心です。 たまに万引きが報道されることがあっても、学校の教員や警察官、政治家などの公職にある人や有名人の事件が大半です。 そのような意味では、万引きは犯罪の中では軽視されているような印象さえあります。
しかし、検挙される犯人者の数で見ると、圧倒的に多いのは、実は万引きなのです。 万引きは刑法犯全体の約30%をも占めています。
もちろんこれは、書店の店主が犯人を現行犯逮捕し、警察へ被害届けを出し、事件として扱われた件数です。 そのため、逮捕していない、逮捕したとしても警察へ被害届けを出していないものまで含めると、 その被害の数ははかりしれないものがあります。
実際、科学警察研究所の研究報告を調べると、この1年間に万引きをしたことがあるかどうかのアンケートに対して、 中学生や高校生などの1割以上があると答えています。 このように万引がいかに裾野が広い犯罪であるかが理解できると思います。
さらに書店などの利益率を考えると、万引きが与える影響はとても深刻なものとなっています。
もともと書店は、利ザヤが低い商売だと言われています。一般的には、書店の粗利は10%程度です。 そのため、1冊万引きされた分を取り戻すには、10冊は販売しないといけないことになります。 1冊数百円程度の雑誌ならまだしも、1冊数千円するような写真集などが万引きされると、書店にとっては大打撃です。
一方、このようなデータもあります。アメリカの大手コンサルティング会社、アーサーヤングの統計によると、 万引きや従業員の不正による小売店の被害額は、売上げの3%程度だということです。 つまり、書店の場合でいうと、利益の約1/3は万引きにより消失していることになります。
このように万引きは、世間の関心は低いものの、犯罪の中で最も数が多い身近な犯罪であり、 かつ被害額も相当なものであると理解できます。
デジタル万引きは、普通の万引と比べて、罪の意識はかなり低くなると想定されるため、 その予備犯罪者数はとてつもない数字になるものと思われます。