世界の主な国の名前がつけられた背景を紹介します。
西ヨーロッパでは、まず貴族のみが姓を用いる時代があり、次に庶民に広まっていきました。 そして、17世紀の市民革命によって、貴族の姓の権威が否定され、 近代に入ってからは姓の違いは人間の尊卑に無関係だとする考え方が確立しました。 ヨーロッパの姓を個人名の下につける習慣は、 10世紀もしくは11世紀にイタリアのベネチアの貴族の間で起こったとされています。 それは十字軍に参加した貴族によって、母国であるフランス、ドイツ、イギリス、スペインなどに伝えられました。 そのため、西ヨーロッパ諸国の姓は共通の性格をもっていますが、 北ヨーロッパや東ヨーロッパの姓のありかたは、民族によってまちまちです。
イギリスやアメリカなどの主要な姓ができたいきさつを説明します。 ジョン、ウィリアム、ヘンリー、リチャード、ロバートの5つの名前が、 14世紀のイギリスの男性の個人名の約64%を占めていたとされています。 そのため、あちこちの農村で名前の下に通称をつけて、同名の者を区別する習慣が生まれました。 農民が高貴な通称を使うと領主の反感を買う恐れがあったので、かれらは身分にふさわしい名称を用いました。 大きくは次の4種類に分類されます。第1に父親の個人名に由来する、 ジョンの息子をジョンソン、ピーターの息子をピーターソンとする形のものです。 第2に身体の特徴をあらわす姓で、白髪の人をホワイト、赤毛の人をリードとする類です。 第3に職業をあわらすスミス(鍛冶屋)、カーター(大工)、ミラー(粉屋)です。 そして第4に地名もしくは地形にもとづく、ヒル(丘)、ウェルズ(泉)などがあります。
ヨーロッパでは、当初は姓のちがいが貴族と庶民を見分ける符号として機能していましたが、 市民革命の時その役割は否定され、その時期から現代にいたるまで、 ヨーロッパの社会では、姓より個人名が重んじられています。