そもそも命名するのは親の権利か、子の権利かという問題がありますが、
法的には、民法第1条3の「権利の濫用は許さない」、
戸籍法第50条1の「子の名には、常用平易な文字を持ちいらなければならない」という規定以外にありません。
そのため、法理論的に定説がなく次の3つの意見があります。
1.親の持つ「親権」の一つである
2.命名される者(出生者)固有の権利だが、親権者が代行している
3.命名の基礎は命名さるべき出生者にあるが、親権者が事務管理者として代行している
現在の法務局の解釈としては、親の命名権は、原則として自由に行使できるが、
例外として濫用にあたるような場合や、社会通念上明らかに不適当と見られるとき、
一般の常識から著しく逸脱しているとき等の場合には、
戸籍事務官掌握者においてその審査権を発動し、名前の受理を拒否することができるということになっています。
この問題を大きく世間に知らしめた事件として、1993年に起こったあの有名な「悪魔ちゃん」事件です。 当時、ある夫婦が居住していた同市役所の戸籍課に、「悪魔」と記入した子の出生届を提出したところ、 受理手続きを留保されました。 その後、家庭裁判所を経由して判断を委ねられた法務局から、 「人名の持つ概念から著しく逸脱している」との指導を受けたが夫婦は納得せず、 不服を申し立てました。主な理由は、「悪魔」という名前は、戸籍法50条に規定する制限内の文字からなっており、 誰からも興味を持たれ、多くの人々と接してもらえることが子の利益になる、という主張でした。 そしてマスコミ等も巻き込みながら大きな問題に発展したのですが、 結局のところこの夫婦は、「阿久魔」という名前で再度申請したが、 受理してもらえず、「亜駆」という名前で落ち着きました。 文字を分解すれば、「亜」、「区」、「馬」となります。