土地は大きな広がりをもってつながっているため、そのままの状態では所有権などの権利の対象としては適していません。 そこで権利の対象とするには、それを人為的に区画しなければならないことになります。
そこで、区画された土地相互についてその境目、つまり境界が生じることになります。
土地について境界といった場合、2つの意味があります。1つは公法上の境界であり、もう1つは私法上の境界です。
公法上の境界とは、 筆(土地登記簿上の土地の個数の単位で、地番を付されて区画されたもの)を異にして隣接する土地の境目を意味します。
例えば、○○町1丁目1番の土地と○○町1丁目2番の土地との境目はどこかということです。
この場合、各土地の所有者が誰であるかということは関係ありません。 従って、この意味での境界は、国のみが定められるものであって、性質上、最初から客観的に定まっており、 関係当事者の合意によって決まるものではないのです。
つまり、いくら直接の利害関係を有する隣接土地所有者の間で、争いのない線を地番の境目と協定したとしても、 それは公法上の境界を定めたということにはならないのです。
そして、この公法上の境界について争いが生じれば、裁判所にその確定を求める境界確定の訴えを提起し、 その判断を求めることによって、解決することになります。
これに対し、私法上の境目とは、土地の所有権の範囲の問題であり、隣接する土地の所有権の境目を意味します。
公法上の境界と私法上の境界が一致していれば、問題はないのですが、一致していない場合も多いのです。
実際、みなさまの家でもそうだと思うのですが、どこからどこまでが誰のものなのかは、 なかなか明確にはなっていないと思います。
隣接するところに境界の目印があったとしても時代とともにそのマークが消滅してしまったり、 知らない間に越境されていたり、境界を知っている人が亡くなったりといろいろな場合があります。
このように公法上の境界と私法上の境界が一致していないということが、 そもそも土地境界のトラブルが発生しやすい原因でもあるのです。
境界の話題がでたときには、その境界は公法上のものを意味しているのか、私法上のものを意味しているのか、 そもそも公法上と私法上の境界は一致しているのかなど整理した上で議論するといいと思います。