ここでは隣地隣家との間で、土地境界以外で起こりがちなトラブルについて説明しておきます。 想定される事例を紹介し、その事例に対する対策という形で整理しておきます。
■建築工事をするので隣地に入りたい
民法は 「土地の所有者は境界またはその付近において塀や建物を築造または修繕するため必要な範囲で隣地の使用を請求することができる」 と規定しています(209条1項)。
工事の内容が塀や建物に限られるかについては争いもありますが、 限定せずに水道管などの工事や植樹の場合にも隣地使用権を認めるべきだという考え方が多数を占めています。
さらに、必要があれば隣地へ立ち入ることもできます(民法209条1項但書)。 しかしプライバシーなどの権利を保護するため、隣地へ立ち入る場合には、必ず住民の承諾をとっておくようにして下さい。
■隣家が境界付近に家を建てている
本来、所有地上であればどこでも自由に建物を建築できるはずですが、 境界ぎりぎりに建てると、隣地の建物建築や修繕、あるいは通風や日照などに支障をきたしてしまいます。 さらに災害防止の見地から、民法は「建物を建築するには境界線から50センチメートル以上の距離をおかなければならない」 と規定しています(民法234条1項)。
もちろんこの規定は、隣地所有者との利害を調整するためのものですので、 当事者間の合意により、境界線から保持すべき距離を短くすることもできます。
また、過密した市街地などで、すでに距離をおかずに建物を建築することが慣習になっている場合には、 距離をおかずに建物を建てることができます(民法236条)。
いずれにしても境界付近に家を建てる場合には、 上記のような基本ルールがあるということを最低限理解しておく必要があると思います。