仙台市などで相次いだ虚偽の「養子縁組届」や「婚姻届」による戸籍偽造事件を受け、 被害者の戸籍に虚偽記載の痕跡が残らないよう戸籍を再製できる制度の創設を盛り込んだ戸籍法改正案が、 4日にも国会に議員提案される見通しとなった。
自民、民主両党をはじめ各党が賛成する方向で、今国会で成立する公算が大きい。 被害者の救済を主眼にした改正案で、過去のケースについても本人の申し出があれば、さかのぼって戸籍が再製される。
現行法で再製できるのは戸籍が物理的に滅失した場合に限られている。 戸籍訂正の手続きはできるものの、虚偽の記載が明らかになって訂正されても、例えば婚姻の記載に無効を示す「×」印が残り、 完全な原状回復にはなっていない。
改正案は、虚偽や錯誤による届け出、市町村長の過誤によって記載がされた戸籍について、本人から戸籍再製の申し出があった場合、 法務大臣は再製について必要な処分を指示するとしている。 市町村長が記載する際に文字の訂正、追加、削除をした戸籍についても同様に再製できるとした。
戸籍偽造事件を受け、衆院法務委員会(山本有二委員長)の与野党議員が、再製を求める被害者の要望にこたえたい―などとして、 戸籍再製制度の創設を協議。既に戸籍法改正に着手していた法務省と連携を取りながら改正案をまとめた。 改正案は3日に自民党法務部会での了承を得る段取り。その後、山本委員長による委員長提案の形での提出、今国会での成立を目指す。
仙台市の戸籍偽造事件は昨年8月、本人の知らない養子縁組届が青葉区役所に出されたことで発覚。 不正取得された印鑑証明書や住民票が、盗難車の転売や消費者金融からの借り入れに悪用され、同様の事件が全国で相次いだ。 このため被害者から戸籍の原状回復を求める声が上がっていた。
戸籍偽造の防止策として仙台市は昨年10月から、養子縁組や婚姻など20種類の届け出の際、申請者の本人確認を窓口で求める独自制度を実施。 一部の自治体に広がったが、今回の改正案では届け出時の本人確認の義務付けは見送られた。(河北新報)