夫妻の夫婦の不倫問題、離婚や不倫相手への慰謝料請求、愛人の子供認知など不倫や浮気にの法律問題を紹介。

不倫の法律問題

保険金や年金を不倫相手に渡すには

一般に死亡保険金の受取人に被保険者の配偶者や親族でない第三者を指定する場合、 保険会社は「契約の目的が公序良俗に反しないか」「不正な利得を図られるおそれがないか」を慎重に検討する。
双方ともに婚姻配偶者がいない内縁関係の場合、内縁の妻や夫を保険金の受取人に指定することは比較的容易なようである。 しかし、一般的に重婚的内縁関係の場合、保険会社は配偶者でない内縁妻・夫を保険金の受取人とすることは承諾しない。 (もちろん保険会社によっては、例外的な取扱いを許すケースがあるかもしれないので、確認していただきたい。)
仮に契約者が保険会社に対し、第三者を受取人に指定する理由に虚偽の説明をしてなんとか契約成立にこぎつけたとしても、 保険金の請求の段階で、「保険契約締結の際の虚偽説明」を理由として契約が無効となる可能性がある。
判例(東京地裁平成11年9月21日)においても、保険契約自体が不倫関係の維持を目的とするものであり、 虚偽の説明に基づいて締結されたものであるから、保険契約は無効と判断し、保険金の請求を棄却したケースがある。 ただし、この判決は「不倫関係の維持を目的とする保険契約」だからこそ無効と判断したので、配偶者との関係が破綻しており、 不倫関係の者との間に重婚的内縁関係が成立していると認められる場合には、判断が異なる可能性がある。

■遺族厚生年金・死亡退職金
厚生年金保険法第59条は、遺族厚生年金の受給者たる遺族の範囲について「被保険者または被保険者であった者の配偶者」をあげ、 配偶者には「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」を含むとしている。 国民年金法上の遺族基礎年金の需給についても同様の規定があり、 国家公務員共済組合法にもとづく給付、地方公務員共済組合法・私立学校教職員共済法上の給付についても同様である。
年金は、老後の生活保証としてきわめて重要な位置を占めている。 若いうちは、重婚的内縁関係の配偶者に先立たれても働いて稼ぐなり再婚するなりできるが、 年老いてその憂き目を見る者(その多くは女性である)にとって、自活の道は厳しい。
内縁の配偶者が生存している間は、事実上生計をともにして相手の年金を頼りに暮らすことができた。 しかし相手に先立たれ、遺産の相続権はない、年金も取り上げられるといった状態では、 どうやって暮らしていけばよいのか途方にくれるだろう。
過去に、重婚的内縁関係の配偶者について遺族厚生年金や遺族共済年金の給付資格が争われた判例では、 配偶者との婚姻関係が完全に形骸化し、婚姻関係が復活する見込みがない場合には、 婚姻関係にある配偶者よりも重婚的内縁関係の保護を優先すると述べられている。(東京地裁昭和62年11月25日など)
しかし、黙っていても給付は受けられない。婚姻夫婦の間に一切の往来がなかったことや経済的な依存関係がなかったことなど、 婚姻関係が完全に形骸化していたことを証明してはじめて、重婚的内縁関係の配偶者にこれらの給付が可能となる。 言い換えると、一方が死亡するより前に、こうした争いが起こることを予見して証拠を準備しておかなければならない。
なお、民間企業の死亡退職金の給付対象については就業規則などに記載されているものの、 内縁の配偶者に対する給付に関しては記述が曖昧なものが多い。事前に確認しておく必要がある。


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