愛人や恋人に食事をおごったり、プレゼントをあげたり。
仲のよい間はよいが、ひとたび別れるとなるとそれまで費やした時間や費用が惜しくなり、
返してくれという訴えをしばしば耳にする。これは可能だろうか。
食事をおごり、プレゼントを買い与えるという行為は、贈与に当たる。
贈与については、法律上にいくつかの定めがある。
書面によらない贈与については、履行前には約束を取消すことが可能である。
ただし、履行が終わっているものは、取消しは不可能と規定されている(民法第550条)。
すなわち、クリスマスのプレゼントの約束など、契約書が作成されていない贈与は、
クリスマスの来る前に別れてしまった場合には約束を取消すことが可能である。
しかし、プレゼントをあげた後に別れたからといって、取り返すことはできないということだ。
■不法原因給付の返還請求はできない
では、プレゼントの目的が不倫関係の維持が目的で、贈与自体が公序良俗に反して無効になるから、
返還請求したいという主張はどうだろうか?
公序良俗に反する目的で給付したものは「不法原因給付」として、返還請求できないと民法第708条が定めている。
裏口入学詐欺で支払った金を取り戻せないのと同じである。
「あれは貸した金なんだから、愛人であろうとなかろうと、返してもらいたい。」というケチな元旦那もいるようだが、
金銭貸与の目的が愛人関係の維持にあることが認められれば、金を貸すという約束もやはり無効になるので、
法律上、相手方には返済義務がなくなってしまうのである。
例外的に、不法性が受益者、つまり金品を受け取った側にだけある場合に限って取り戻せるとされているが、
不倫関係であれば、受益者側だけに不法性があることは稀だろうから、可能性は低い。
スケベ心を出しておいて、金だけはきっちり返してもらおうという魂胆が甘いということだ。