不倫がばれて夫婦関係がギクシャクする。離婚したいが手続き上のハードルもあり、すぐには踏み切れない。
とりあえず、別居して今後を考えたいという夫婦は多い。
配偶者ともめて夫婦別居に踏み切った場合、精神的なダメージはもとより、今後の生活や子供のことが現実問題として迫ってくる。
当面の生活費は誰が、一体いくらぐらい負担するのか?
■婚姻費用の負担
夫婦の共同生活に必要な一切の費用(衣食住、子供の養育費、医療費等すべて)を「婚姻費用」という。
夫婦には「相互扶助義務」(民法第752条)と「子供の扶養義務」(民法第877条第1項)があるため、
離婚しない限り、原則としてそれぞれの負担能力に応じて相手が、
自分と同程度の生活を保持するに足りる費用を支払う義務がある(民法第760条)。
具体的な金額は世帯収入や生活状況に応じてさまざまだが、収入の観点から夫が妻に対して支払うのが一般的だ。
婚姻費用の請求が問題になるのは、夫が妻と子供を置いて勝手に家を出てしまったり、
夫の暴力に耐えかねて妻と子供が自宅を出たなどで、別居になった妻が、子供と自分の生活費を夫に請求する場合が主である。
ところが中には、恋人を作って子供を連れて家を出た妻が、恋人とは同居せずに、残してきた夫に生活費を要求するケースがある。
請求された側はとんでもないと思うかも知れないが、婚姻費用は婚姻関係にある限り請求できるので、
別居原因を作った側の配偶者からも請求可能である。ただし、子供の生活費は別として、
配偶者自身の生活費分は否定されるか減額されることが多い。
当事者間で生活費の支払金額・支払方法の話し合いがつけばいいが、
つかない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることになる。
調停で相手が支払いを約束してくれれば、家庭裁判所はその旨を記載した「調停調書」を作成する。
約束した額の支払いを怠る場合には、家庭裁判所に「履行勧告」の申立てをして催促するほか、
地方裁判所に「強制執行」を申し立てて支払いを強制することもできる。
任意で支払額に合意していても、一応家庭裁判所に申し立てて、
合意額や支払方法について調停調書を作成しておくと安心である。
■月々20万円は覚悟しておく
平成13年度に家庭裁判所に婚姻に関する調停を申し立てた夫婦のうち、裁判所で生活費や養育費の取り決めをした金額をみると、
標準的には子供2人の養育費と妻の生活費を合わせて、夫の支払額は月々20万円といったところ。
もちろん、妻の側の収入が充分高ければ、婚姻費用の請求が認められないこともある。
子供が高校生や大学生であれば、授業料や入学金といった一時金も必要となる。
養育費では月額の支払いだけでなく、こうした一時金の支払いを約束することもある。
給与のベースアップが凍結されている昨今、別居に踏み切ることの経済的負担はきわめて大きい。
妻が専業主婦の場合、当面の収入は夫のものだけなので、お互いの生活水準が下がってしまい、
子供の教育環境すら悪化してしまう。別居にもリスクがあるのである。