夫・妻の不倫に悩んで相談される方の真の希望は、多くの場合、離婚することではなく、配偶者を不倫相手から取り戻すことである。
残念ながら、人の気持ちは魔法を使っても変えられない。まして法律や裁判で、不倫そのものをやめさせることはできない。
それでは、不倫をされた側は泣き寝入りするしかないのかというと、そういうわけでもない。配偶者には相応の方法がある。
■内容証明郵便で相手に警告
不倫相手に対する対抗手段としては、まず、郵便局に正式な控えが保管される「内容証明郵便」で警告書を送付することが考えられる。
「今後も不倫を続けるならば、慰謝料を請求します。」という内容だが、書きようによっては脅迫や名誉毀損での逆告訴もありうる。
そのような言質をとられないような範囲で、やや柔らかな印象のなかで、それなりの威力のある文章を書くのがコツである。
普通の人であれば、内容証明郵便を受け取れば、差出人が本気であることを知り、軽い遊びのつもりの不倫関係なら解消するだろう。
ただし、このような書面を不倫相手の職場などの第三者の目に触れる可能性のある場所に郵送すると、
名誉毀損の損害賠償という逆襲を受けるかもしれないので、発送先は慎重に検討する必要がある。
■夫婦関係調整調停の申立て
一方、配偶者に対しては、夫婦関係の修復を求めて、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停」(円満調)を申し立てることができる。
夫婦関係調整の調停には、この円満調整と離婚を求める夫婦関係解消という正反対の二種類がある。
夫婦関係はいったん破綻すると回復不能なように思いがちだが、長年続いた信頼関係はそんなに脆いものではない。
赤の他人の調停委員の手を借りるなんて、と思わずに、この手続きに賭けてみる価値はある。
ただし、これは申し立てた側からのお願いベースの話なので、
夫婦関係を修復するためにそれ相応の態度をこちらから見せなければならない。
プライドの高い方は、その辺の力関係をよく理解したうえで手続きに臨んでいただきたい。
■「別れさせ屋」はリスクが大きい
近年、不倫相手に別の異性を接近させて不倫解消を仕向ける「別れさせ屋」を請け負うところがある。
藁にもすがる思いで依頼されるのだろうが、個人的にはお勧めできない。
費用にまつわるトラブルも多く聞くし、もし悪質な業者が不倫相手に結婚をちらつかせて金銭を詐取すれば、
結婚詐欺に発展するおそれもある。
依頼者がそれを承知していたと当局に判断されれば、共犯者とみなされかねない。
また、「別れさせ屋」を依頼していたことが不倫相手にばれたら、業者ともども慰謝料請求の逆告訴をされることも考えられる。
家庭を守るためとはいえ、一人の人間の気持ちをもてあそぶこととなるので、それなりのリスクを覚悟する必要がある。