単なる愛人関係ならお互いの姓のことなど関心がないだろうが、もし不倫相手との間に子供ができた場合、
また不倫関係が重婚的内縁関係に至っている場合、苗字の問題は社会生活上、重要な関心事となる。
内縁夫婦は婚姻届を出していないので、当然のことながら姓は別々である。
また仮に子供が生れて父親が認知しても、子供は母親の戸籍に入るため、子供の姓は母親の姓となる。
■子の氏の変更の申立て
子供の姓については、民法第791条第1項に「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、
戸籍法に定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる」と定められている。
これが「子の氏の変更申立て」である。
子供の姓の父の姓への変更が認められると、子供の戸籍は母親の戸籍から父親の戸籍に移ることになる。
不倫相手の子供が自分たちの戸籍に侵入してくるような抵抗感を感じる法律婚の家族(妻子など)の反対は非常に厳しい。
家庭裁判所は、子の氏の変更申立てがあった場合、法律婚の家族の意向も調べ、そちらも配慮する。
変更が認められなかった場合、子供はその決定に対し異議を申し立てることができるが、
変更を認める決定に対して法律婚の家族は異議を申し立てることができないので、法律婚の家族の意向が絶対というわけではない。
■重婚的内縁夫婦間の氏の変更の申立て
長年、重婚的内縁夫婦が同じ姓を通称として使用し、周囲にもその姓で通し続けた場合、内縁の一方の姓について、
家庭裁判所に「氏の変更申立て」をしてみる価値はある。
これは、婚姻等の身分の移動とは無関係に姓を変更する手続きであるが、やはり家庭裁判所の許可が必要とされている。
(家事審判法第9条第2項、戸籍法第107条)
この姓の変更には、過去の判例から次にあげる「やむをえない事由」が条件とされている。
(1)法律婚が長期間破綻状態にあること
(2)法律婚の妻が、内縁の妻の氏の変更によって利益を侵害されないこと
(3)事実上、内縁の妻が夫の氏を通称として長期間使用してきたこと
(4)内縁関係夫婦の同居期間が10年を超えており、実質的な夫婦として保護する必要性が高いこと
重婚的内縁夫婦間で姓を統一するための姓の変更を認めることは、婚姻届をしない状態で婚姻夫婦の外見を作り出すことに近い。 別に法律婚が存在しているため、ハードルは高い。しかしながら、以上の条件を満たしていれば、 変更が認められる可能性がある。