特定商取引法、消費者契約法、クーリングオフの法律知識と悪徳商法、悪質商法の被害対策の方法を解説。

消費者保護と悪質商法対策

かたり商法

Q.
休日にアパートで休んでいると、制服のような服装をした男性が「消火器の検査に来ました」と訪ねてきました。 「消火器は置いていない」と言うと、 「私は消防署の方から訪ねてきた者です。最近は、アパートでも一世帯に1台、消火器の設置が義務付けられ、 回覧板にも書いてあったはずです。見てないんですか。」 「ちょうどよかった。たまたま今1台持っていますので、特別に分けてあげましょう。」と言います。
男性が制服のようなものを着ていたので、すっかり信用してしまい、代金の2万円を払って購入しました。

A.
公的機関の名前をかたって商品を売りつける商法を「かたり商法」といいます。 かたり商法では、このケースの消火器が一般的ですが、古くからある典型的な悪質商法で、 4月、5月の転勤、入学などの移動のシーズンを狙って行なわれることが多いものです。
消火器の場合には、その場で現金を支払い、消火器を受け取るという「現金取引」で行なわれます。
昭和63年5月に訪問販売法(現:特定商取引法)が改正され、3,000円以上の現金取引の場合には、 クーリング・オフの適用があることが明確にされました。したがって、このケースでも、クーリング・オフすることができることとなり、 クーリング・オフの通知をして、支払った代金全額の返還を請求することができます。
ただ、実際に代金を支払ってしまった場合には、その代金を取り戻すことは簡単なことではない場合が少なくないようです。 法律上では、クーリング・オフの通知があった場合には、 「業者はその取引に関して受領した代金全額をすみやかに返還しなければならない。」という義務がありますが、 悪質な業者の場合には、なかなか返還してこない場合もあるわけです。 その場合には、支払督促手続や少額訴訟制度などの裁判手続きを利用することが必要となります。
もし、クーリング・オフ期間を過ぎてしまってから、だまされたことに気付いたら、 法律などで設置義務があるなどとだまされたわけですし、売主が消防署だと勘違いしたために買ったわけですから、 詐欺による契約として取り消すなり、錯誤による無効を主張することが考えられます。 詐欺の立証はマン・ツー・マンの密室での取引の場合には難しいことが少なくありませんが、 同種の被害が多発しているような場合には、比較的証明しやすいと思われます。


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