■契約書は将来の紛争を予防し、紛争が発生したときの重要な証拠になる
契約は口約束でできるとしても、当事者間で食い違い、思い違いが多々発生し、トラブルの基になります。
口約束の内容について争いが生じたときは、判断する資料を欠き、どちらの言い分が正しいのか判定ことが困難です。
しかし、約束事を書面にすることによって意思が明確になり、紛争を未然に防止することができるのです。
書面にする際に大切なことは、権利と義務の関係が明確になっていることと、
約束が守られなかった場合にどのようなどんなペナルティがあるのか、さらに契約を解除・消滅できる場合、
解除消滅した後の後始末をどのようにするのか(原状回復)を明記することです。
ただ、契約には権利義務の内容によっていろいろな種類がありますので、契約の種類によって具体的にわかりやすく表現する必要があります。
記載されている条項が、どちらともとれる不確定なものであれば、何の意味もありません。
裁判になって証拠として提出されても、その証明力が減殺されてしまうからです。
また、契約書には、協定書、念書、約定書、覚書とか、いろいろな名称を用いることがありますが、
名称にはあまり関係なく、書いてある条項が大切なのです。一般的には、販売業者があらかじめ印刷された書式を用意し、
購入する消費者にはその書面に署名押印させます。
書式は「申込書」というような場合もありますが、その申込書に消費者が署名押印して代金を支払い、
業者が承諾した形式を踏めば、立派に契約が成立するのです。したがって、商品の購入にあたっては、
書面の記載内容をよく確かめ、記入する欄は納得して記載しなければいけません。
特別に約束されない条項については、契約の目的に従って、特定商取引法、消費者契約法等の特別法の適用があり、
特別法に規定のないものについては、民法・商法の一般法を適用します。
書面の交付を受けたら自分を業者にどんな権利義務が生じるのか、をよく確かめることです。
多くの場合は、金銭の支払条件であり、違約したときの損害金です。
逆に、業者の義務、すなわち購入者の権利は、商品の引渡しと品質の保証です。
契約ができたとしても契約を取り消したり、契約を失効させることができます。
それは、消費者契約法や民法・商法に定めるものだけでなく約定による場合もありますので、
契約解除条項がどのようになっているか、よく見極める必要があります。
■消費者取引は取引の方法に問題がある
契約内容が書面化されると、不当・違法な条項は容易に判断でき、契約が全体的に、または一部が取消されたり、無効になったりします。
その意味で、契約が書面化されると必ずしも業者に有利であるとはいえません。
問題の多い業者の契約書でも、それ自体、問題があるのは多くありません。
そこで、悪質業者は契約内容を複雑にし、わかりにくくするだけでなく、不当な利益を得るために、手を変え品を変えて、
いろいろな手段、セールストークを用いて、とにかく購入者に契約させるようにするのです。
この取引方法が、現在では消費者問題の中心的な課題になったといえます。
そのため、特別法や各自治体の消費者条例では、業者が消費者として契約する際に、
業者に対して禁止行為を掲記する条項がみられるようになりました。
行政では、違反行為が直ちに罰則を伴うのではなく、行政が、調査・指導・勧告、違反業者の公表等の行政処分をするだけで、
契約の有効・無効を判定するものではありません。しかし、民法の無効・取消の要件はきわめて難しく、
不適切な取引は一般条項である公序良俗(90条)や信義則違反を適用して救済せざるを得ませんでした。
そこで平成12年法律第61号で「消費者契約法」を公布し、民法における中小的要件を具体化し、
詐欺・脅迫条項の要件を緩和し、被害者の立証責任が軽減されました。